重要! 流体の運動を支配する3つの方程式:自然界のルールを数式に翻訳する

コンピュータの中で流体の動きをシミュレーションできるのは、流体の振る舞いが厳密な物理法則に従っているからです。流体力学の根幹をなすのは「連続の式」「ナビエ・ストークス方程式」「エネルギー方程式」という3つの支配方程式です。これらはそれぞれ、高校物理で学ぶ「質量保存則」「運動量保存則」「エネルギー保存則」を、流体という連続体に適用できるように書き換えたものです。

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第一の「連続の式」は、質量の保存を表します。流体の中に目に見えない微小なサイコロ状の空間(コントロールボリューム)を想像してください。この空間にある時間内に「流れ込んだ質量の合計」と「流れ出た質量の合計」の差分は、その空間内で「変化した流体の質量(密度の変化)」と必ずピタリと一致するという法則です。水のように圧縮されない液体(非圧縮性流体)であれば密度の変化は起きないため、単に「入ってきた量=出ていった量」という極めてシンプルな関係になります。

第二の「ナビエ・ストークス方程式」は、流体力学の心臓部とも言える最も重要な方程式です。これはニュートンの運動の第2法則(F=ma:力=質量×加速度)を流体に適用したものです。流体の微小な塊に対して、自身の質量による「慣性力」、圧力の差によって押し出される「圧力勾配力」、ドロドロとした摩擦による「粘性力」、そして重力などの「外力」がどのように釣り合って加速度を生み出すかを記述しています。

一見すると完璧な方程式ですが、致命的な難点があります。それは、速度と速度の勾配が掛け合わされる「移流項」という非線形な項が含まれていることです。この非線形性が、予測不能なカオス状態である「乱流」を引き起こします。ナビエ・ストークス方程式は数学的にあまりにも複雑なため、一部の極めて単純な条件を除いて、人間の手計算で厳密な正解(解析解)を導き出すことは不可能です。(※この方程式の滑らかな解の存在を数学的に証明できれば、クレイ数学研究所から100万ドルの賞金が出る「ミレニアム懸賞問題」の一つにもなっていました)

第三の「エネルギー方程式」は、熱力学の第1法則(エネルギー保存則)を表します。微小空間が持つ内部エネルギーの時間変化が、外部から加えられた熱エネルギーや、圧力・粘性がした仕事の総和に等しいという式です。温度変化を伴う現象、たとえば電子基板の冷却解析や、自動車エンジンの熱交換器の設計など、「熱流体解析」を行う際には欠かせない方程式です。

これら3つの方程式を手計算で解けないからこそ、空間を数百万のメッシュに分割し、単純な四則演算の繰り返しに落とし込んでスーパーコンピュータの力技で近似解を求める「数値流体力学(CFD)」というアプローチが発展してきたのです。

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